お宝(研究上)
松田竹太郎「米国工場に於ける人事記録の例」 『九州機械工業会誌』第26号(1931年8月2日刊)別刷 表紙拡大
入手経緯: 私のメモ によれば、1999年7月15日に、明治大学経営学部の同僚であった佐々木聡先生の大学研究室にて、佐々木先生同席のもと、奥田健二先生(もと日本鋼管・上智大学)より、この別刷を私がいただいた。奥田先生は、呉海軍工廠に勤務していた方の旧蔵物を入手されたと思われる。その時、その方のお名前を、奥田先生は「ど忘れ」で、うかがうことができなかった。その後いつしか、その方の名前を「伍堂卓雄」と私は思うようになっていた。しかし、今回のupにあたって、その時の私のメモ をみると、「論文をたくさんかいた人」が「伍堂卓雄」であって、奥田先生は「亀戸の方にいた人」から入手されたように思われる。「亀戸の方にいた人」の名前は不明である。今回のupにあたって佐々木先生にもご確認したが、ご記憶がなかった。私はこの論文を山形大学在職中の1993年から探していた。
2021年4月25日に気づいたのだが、1999年入手は誤である。なぜならば、この別刷をもとに記述した遠藤公嗣『日本の人事査定』は1999年5月31日刊だからである。1999年でなく、1998年である可能性が高い。『日本の人事査定』原稿が相当できあがった後に入手した,との私の記憶にも、これが一致する。(2021年4月25日の注記)
内容: 松田竹太郎が1927-29年に米国出張滞在時にGMのRiver Worksを訪問し、そこで実施されていた人事査定制度を調査した報告。査定書式の復刻もある。時期と内容で、他に類例がない。遠藤公嗣『日本の人事査定』122頁 に記述がある。
貴重度: 『九州機械工業会誌』第26号は、国会図書館にも、cinii掲示の大学図書館にも、所蔵がない。おそらく現存する「別刷」はこれだけであろう。
追記(2024年2月22日): 『九州機械工業会誌』全号、すなわち第1号(1918年11月)から最終号である第46号(表紙の記述は1943年12月、奥付は1944年5月)まで、が九州大学理系図書館に所蔵されていることを知った。なお、所蔵の全号が、デジタル目録化されていないので、ネット上で、所蔵を探すことはできない。私は、2024年2月19日に理系図書館を訪問して、合冊され4分冊となっている全号を閲覧し調査した。以下は『九州機械工業会誌』全号を概観した私の印象である。
1)諸機械の工学的記事ばかりでなく、工場に於ける新設の機械について、工場当事者による稼働記録とか、九州機械工業会による工場見学の記録とか、が多い。
2)上記の記録には、「あるいは」と私は思っていたのだが、工場に於ける工員の労務管理や賃金制度の叙述や論文が含まれる。 したがって、松田竹太郎「米国工場に於ける人事記録の例」は、その一例であった。
3)上記1)と2)には、軍工廠の場合もある。とくに『九州機械工業会誌』初期の記事や論文には、軍事機密にあたるのではないか、と思われる記述が「平気で」記述されている。たとえば、大砲の鋼材の性質とか製造の精度や効率がわかる記述がある。軍工廠の文書は第二次世界大戦直後に焼却処分されたため、残っているものが少ない。その点で、貴重である。
4)目次によれば、『九州機械工業会誌』の刊行理由の記事が第1号にあるはずだが、所蔵のものは、合冊に製本する際に、この記事を含めて会に関わる記事は削除されていた。残念なことである。
5)『九州機械工業会誌』の記事は、現在は、工学的見地からはほとんど重要でないであろう。しかし、たとえば経営史的見地からは、非常に重要なものがある。松田竹太郎「米国工場に於ける人事記録の例」は、その一例であった。
松田竹太郎「米国工場に於ける人事記録の例」『九州機械工業会誌』第26号(1931年8月2日刊)別刷