補足コメント
私は、2003年10月より、在イギリスで研究をしています。その過程で、下記論文を偶然に読みました。
Kochan, Thomas A., 2001,
"Can the U.S. Industrial Relations System be Transformed?: The role of Ideas, Reform Efforts, and Social Crisis,"
In Berg, Ivar and Arne L. Kalleberg eds., Sourcebook of Labor Markets Kluwer Academic/Plenum Publishers, New york, 2001.
労使関係研究の現状認識について、Kochanは私の学会報告に近いと思いました。興味深いことです。もっとも、同時代に生き、同時代の状況を見ているので、同じようなことを考える研究者が複数いても、不思議はありません。もちろん細部は、Kochanと私の認識は違いますが・・・。
1990年代のアメリカ合衆国における労働研究には、高い生産性をもたらす企業組織や作業方法の導入がスムースにおこなわれるように促進するのが労働組合の新たな今後の役割である、というような主張(かつて、どこかで聞いたような主張です)を含意する研究グループがあり、Kochan も加わっていたようにみえたので、彼もその一人かと思っていました。しかし、この論文では、彼は「そういう主張についていけない」と思っているのがわかり、これもまた興味深く読めました。
イギリスでも、労使関係研究の伝統的な研究枠組は実質的には崩壊をすでに完了しており、形式上の崩壊もすでにかなり進行しているように思われました。この点は、もっと考察してみたいと思っています。(2003年11月15日記)